レコード盤をトレースする時の針先につくゴミに音質が影響しないでピックアップできることは大きな魅力だが、これには落とし穴があった。
再生される音をデジタルに記録し直すことも可能だけど、万全を成すにはレコード盤の選択が大きな課題になった。SPレコードは長年の埃やゴミを落とすためや、盤面の保護もかねてワックスを塗り広げると鉄針のトレースに良い。しかし、レーザーでのピックアップには災いとなってしまった。ワックスを綺麗に落とす必要があるというのです。
同じことはLPレコードでも問題が大きく、スプレー式のクリーナーが現在課題となっている。容易に埃や静電気を除去できていたが、長年再生されない・・・レコード針を通されること無く過ぎた経年変化は、音溝深くにクリーナー液が埃と共にゴミになってしまっています。レコードの内袋のヴィニール素材も同様で、長年経ってパリパリとなった内袋の表面がレコード盤に張り付いているケースが増えました。
11月待つに友人宅で見せて貰ったフルトヴェングラーの「ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》」がレコード盤の表面に何か浮き立ったような凹凸というか、波模様が全体に広がっていました。購入時には気がつかなかったと言うことで、気がついたら成っていたという。ショップでの再生音を聞いて購入したそうだ。
おそらくプレス時には無かったものだろう。表面に塗られたコーティング剤が変質したものでは無いかと思えた。場合によっては内袋のヴィニールだったかもしれないし、レコード盤の材質が分解しているのかもしれない。
さて、このレコードの演奏。フルトヴェングラーのけして明瞭で優れた音質ではない、くぐもっていて遠くから届いてくるような音だけど演奏家達が過ごした歴史、時代を音に感じてしまっています。
ウィーン・フィルとベルリン・フィルとでは相違点もあるのだけど、正直なところ最もわかり難い指揮棒を振る指揮者だったと当時の演奏家が回想しています。ウィーン・フィルではコンサートマスターにあわせていたとか。
なんだか棒を振り回しているうちに音楽が始まっちゃった、と言った風。真逆を言っているようだけど、指揮棒を下向きに振るって半眼のカラヤンも同様だと言えそうですね。“右手は指揮棒を持って音楽のテンポやリズムを指示し、左手で音楽の高揚など感情を表現する”というのが指揮なのだけど、教科書にはあるけど時代を同じくしている音楽家同士、今日はこの楽譜の音楽をどういう風に観客に感動させようと言った共鳴が指揮者と演奏家それぞれが持っていた時代の録音は力がある。
フルトヴェングラーのベートーヴェンで一番印象的なのが、ティンパニーの連打だ。カラヤンは楽譜にある程度にアクセントとするのだけど、フルトヴェングラーは感情の爆発のようにドラムロールさせる。
ベートーヴェンの《運命交響曲》が良く比較演奏に引き合いに出される。冒頭のダ、ダ、ダ、ダーンが、ダ、ダ、ダ、、、、、、、ダーーーーーーーーーーーーンとタメと粘りがあるのが初心者にもわかりやすいからだけど、第2楽章の終結部での間合いもまた、癖強い。音楽が失速してしまったようで、居眠りしていた観客が居たら間違って拍手でもしかねない感じですね。
フルトヴェングラーの《運命交響曲》の最も勘所は、第3楽章では無いかとわたしは思っている。第4楽章への踏切の準備にかかる前の中間部は他では滅多に聴けない。軍楽調のフレーズを音楽として何か訴えてくるのはフルトヴェングラーが一番ではないでしょうか。カラヤンでも流ちょうで、楽器の響きが美しすぎる。イタリア系指揮者は歌いすぎる。最近の若手はあっさりと通り過ぎる。終楽章の爆発のためのためではあるし、カラヤンは録音ハンデを、この第3楽章を徐々にディミニエンド気味にすることで録音レベルがオーバーにならない美しい終楽章を録っている。
独ELECTOROLAのフルトヴェングラーのワーグナー、オリジナル盤です。音質も良く、盤面は綺麗です。
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- 重量盤★フルトヴェングラー、ワーグナー:序曲、前奏曲集
- レーベル:独 ELECTROLA
- レコード番号:E 90023
- オリジナリティ:レッド・ラベル
- 曲目:ワーグナー:タンホイザー序曲、さまよえるオランダ人序曲、ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲
- 演奏:指揮: ウィルヘルム・フルトヴェングラー、管弦楽:ウィーン・フィル
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