宇宙全体が音をたてて鳴り響き始めるのを想像してください・・・指揮者メンゲルベルクに宛てたマーラーの手紙にある《一千人の交響曲》についての有名な言葉です。「内容においても形式においても他の作品とはすべてが異なっている」とマーラー自身が曲を解説しているように、破格の規模の交響曲。演奏会では通常のステージに納まらなくて、オペラの上演の時の様に客席全面に張り出すようにオーケストラや合唱団が並びます。
バンダと呼ばれる、ステージ上のオーケストラ以外に別働隊も居たり、それがライヴの醍醐味。今夜、午後6時からNHK交響楽団の定期演奏会がNHK-FMで生中継されます。
記録によれば、この初演の演奏者は1030名であった。今日の日本では必ずと言っていいほど、この曲に冠される《一千人の交響曲》というニックネームは興行師のエーミール・グートマンが付けたもので、スキャンダラスな呼び名だからとマーラーは嫌っていたということです。出版された《交響曲第8番》のスコアには「わが愛する妻アルマ・マリアに」という献辞が印刷されている。マーラーが自分の曲を献呈したのはこれだけである。・・・ということです。
この大規模な音楽を、わずか8週間で書き上げたことはマーラーにミューズが降りてきた時だったのでしょう。ベートーヴェンのミサ・ソレムニス、モーツァルトのグラン・パルティータ。ミューズが降りて書かせる音楽に作曲家らは抗うことが出来ないようです。そうして書かれた音楽は非常にシンプルな美しさのあるもので、いじり回す余地が無く又、形式に縛られないので曲の構成的には異質にも感じるものだけど他の曲にはなり得ない。
来たれ、創造主である聖霊よ。
汝に従う者たちの心を訪れたまえ。
天上の御恵みで満たしたまえ、
汝が創られた者たちの胸の内を。
より遠くへ敵を追いやり、
尽くさず平和を与えたまえ。
かくして汝に先導され
我らは、いと悪しきことすべてを避く。
我らの肉体の弱さを
不滅の力で強め、
我らの知恵に明かりを灯し、
愛で我らの心を満たしたまえ。
聖霊降臨節のための聖歌を歌詞としているので、《一千人の交響曲》をクリスマス・シーズンに聴くのも楽しいものです。きっと、ミューズもそれが気に入ってマーラーの筆を手伝ったのでしょう。らじる☆らじるで聴きましょうか http://www3.nhk.or.jp/netradio/player/index.html?fm
- 第1715回N響定期公演 -
「交響曲 第8番 変ホ長調“一千人の交響曲”」 マーラー作曲
(ソプラノ)エリン・ウォール
(ソプラノ)中嶋彰子
(ソプラノ)天羽明恵
(アルト)イヴォンヌ・ナエフ
(アルト)スザンネ・シェーファー
(テノール)ジョン・ヴィラーズ
(バリトン)青山貴
(バス)ジョナサン・レマル
(合唱)東京混声合唱団
(合唱)NHK東京児童合唱団
(管弦楽)NHK交響楽団
(指揮)シャルル・デュトワ
~NHKホールから中継~
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